2nd Stage 
ブラジル(メシアナ島)ピラルクー編

我々はターポンフィッシングを終え首都サンホセで観光する間も無く、ブラジルはアマゾン川の河口にある都市・ベレンへと向かった。これも初となるピラルクーを釣るためだ。
ピラルクーは世界最大の淡水魚と言われ大きくなると3mから4mにまでなる。1,5mになるのに3,4年、主に肉食でピーコッックバスなどを餌とするのだがなぜかピラニアは食べないと本で読んだ事がある。英名でアラパイマ。魚名の由来は『赤い鱗』からきていると聞いた。『ピラ』が赤で『ルク』が鱗だったような気がする。一般的にブラジルでは食用にもされているのでマナウスの市場で塩漬けされたものが並んでいた。
面白いことにピラルクーといえばアマゾンの奥地に生息していそうなイメージがあるが間逆の海側の島にも生息していたのだった。
地図で河口をよく見るとアマゾン川の河口付近には幾つもの島々が連なっている。
河口といっても300kmもあり、想像しただけでもそのスケールの大きさに驚く。
 
今回、2日半ピラルクーオンリーで攻めるのその島の一つにマラジョー諸島の一つメシアナ島があり、ベレンからチャーターセスナで約1時間ほどの距離だ。
 
当時はあの開高さんでさえピラルクーを釣ることはできなかったし、醍醐さんもメシアナ島の近くまでは行ったが残念ながらピラルクーを見つけることはできなかったのだ。
 
それだけ、当時はピラルクーを釣ることは困難だった。
 
近年、怪魚なるものがブームらしいのだが当時は現在と違ってPCもない時代だったからそれを見つける時間と労力は大変だったに違いない。そう考えると今の釣り人はなんて恵まれていることか。開高さんだけでなく諸先輩たちの功績があったからこそこうやって世界各地で釣ができることにつくづく、感謝せねばならないと思うのである。
 
少し話が逸れたが我々はコスタリカから南米方向とは逆のマイアミへ一旦戻り、ベレンに向かう。遠回りにも思える経路だがこの方法が乗り継ぎ時間も短く最適らしい。そしてベレンで大阪組の我々と東京組のお二人、そしてブラジル在住のY氏と合流した。これでメンバー全員集結した。
次なるターゲット、ピラルクーはベレンから翌日にセスナで移動しメシアナ島での釣りとなる。
 
まずは6人の久しぶりの再会を祝いディナーで祝杯をあげた。もちろんベレンに来たら名物カンランゲージョを行く前から食べると決めていた。カランゲージョとはいわゆる泥ガニで上海ガニに似た味で調理方法は茹でただけのいたってシンプル調理だ。味の方は珍味で美味しいのだが松葉ガニやタラバガニのようにあそこまで甘味はない。
カランゲージョはあのオーパ!の中にも出てくるのでご存知の方も多いのでは。オーパ!の中で開高さんがその殻を皿いっぱいにした写真が印象的だったのであれを真似したい思っていた。

 

私も同じように調子に乗って蟹の殻で山盛りにしようと試みたのだが数杯食べたところで何だか身体に異変を感じてきた。
吐き気とがあるわけではなく胃の中が今までに感じたことのない違和感が襲ってきたのだった。
なんとかその場はしのいだのだが夜中、寝ていると足の方から徐々に上半身にかゆみが襲ってきた。ここからが悲惨だった。
はじめはベッドの中でダニにやられたのかと思い消灯した暗闇の部屋で気付かず。時折襲ってくるかゆみと戦うのだが、、まさかホテルにダニがいるなんて、、、、最悪なホテルやな、、寝ぼけているのでダニだと勘違いしながらボリボリ掻きむしるがついに限界がきて部屋の電気をつけると今までに見たことのないジンマシンがそれも全身に。
なんということでしょう。鏡に映し出して見たその症状に気絶しそうになるはで大騒ぎ。まるで『地球儀みたいに凸凹だ』と同じ部屋に寝ていた和気氏の一言が余計にびびらす。
完全に他人事。
幸いなことに抗生物質と塗り薬をU氏が携帯していたので急死に一生をえたが。もう、予備の薬はない。
それでも、今から4時間後にはアマゾンの離れ島に行かなくてはならない。
病院も薬局なんてものはあるはずもない島に。なによりみんなに迷惑をかけられない。
急遽、夜中にポルトガル語が話せるY氏をたたき起こしタクシーで薬局へ。
果たしてこんな時間に開いているのか疑問に感じたがどうやらブラジルは医療費がバカ高いので薬局は24時間営業しているらしい。そのおかげでなんとか予備の薬を手に入れとりあえずこれでまずは一安心。これで気持ちも楽になった。わかると思うがブラジルの離島まできて病気で断念はしたくないのだ。あの時は本当に皆様にはご迷惑をおかけいたしました。
 
どうやら原因はカニの泥があたったらしく。
カニの腹の中に蟹味噌と同じように黒い泥があるのだがこの泥がサザエのウン◯と同じように苦く”通”の味だというので一人パクパク食べたのがいけなかった。後で聞いたら他のメンバーは美味しくないから残したといってたので俺だけがアタル羽目になったのだ。
そんなこんなで出発の早朝にはジンマシンが少しづつひいてきて、なんとか釣りができるくらい回復してきた。

 
そしていよいよ、出発の朝を迎えた。
 
さて、ロビーが何だか騒がしい。メンバーたちがY氏と話し込んでいるので何事かと問い尋ねると今回チャーターした航空会社のセスナ5機の内、先日1機が墜落したという連絡が入ってきたらしいのだ。一難去ってまたかと。どうやら我々が乗る予定だった大型セスナが墜落したらしいのだ。なので今回は2機に分かれての搭乗となるのだという。
 
とにかく我々荷物が思いのほか多く、小型セスナ1機では無理らしい。
 
皆、その墜落の話を聞いて躊躇するとか動揺するのかと思いきや交通事故より確率低いだとか南米では珍しくなとか言い出す始末。
 
このメンバーに恐怖心と言う言葉はないのか?
 

 
そんなこんなでセスナ嫌いの私もセスナに乗り込み上空を飛んでいると次は尾翼からオイルらしきものが漏れているのを和気氏が指差す。
プロペラの音がうるさく全く話し声が聞こえないので、操縦士に指差しで漏れていることを伝えると頭を横に振って問題ないという。いや、問題ないわけわない。だが、他のメンバーは見て見ぬふりをするのだった。やはりこのメンバーに恐怖という文字はないのであった。
 
墜落の不安と戦いながら飛行時間約1時間ほどでメシアナ島に着いたのだが何せ上空では生きたこごちがしなかった。
 

 

到着して知ったのだがマラジョー諸島はマラジョー・パーク・リゾートとして観光開発しているようなのだ。
その中のメシアナ島もリゾート開発が進み、空調完備の宿泊施設にプールと食事もバイキング形式と至れり尽くせりの環境なのだ。

とにかく、我々には想像以上に快適だったのでありがたかった。
あの、ジャングルでの不便さに比べれば雲仙の差がある。当たり前か!
ちなみに広さは四国くらいはあると説明されたが本当のことは良くわからない。
なにせ島といっても想像以上に広く、河口に近いせいかジャングルのように連なった樹木があるわけでもなく、どちらかというとマングローブもあったりとただただ平坦なこの島ならではの風景が想像とは違い新鮮だった。
 
さて、釣りのほうだが高まる気持ちを抑えさっさと昼の食事と準備をすませ、ロッジから車で40分くらい走ったとこにピラルクーの生息するポイントの川と湖がある。
メンバー各々ボートに乗って好きな場所へとちらばる。

ボートにはエレキとポールが装備されていて一人で釣りをするには充分な大きさだ。
今日から2日間半の釣りをすることになるのだが私のガイドはどうみても10代の少年、おまけにポルトガル語なのでチンプンカンプン。大丈夫なのか?とにかく持ち前のアホさを出せば距離は千縮まっていったのだ。
ここのエリアは浮き藻だらけで今ひとつポイントが分かりにくい。
とりあえず、はじめはガイドにまかせてポイントを決めてもらった。
するとふと、不安が頭をよぎった。
さて、ピラルクーを釣るにも今までルアーで釣ったとの情報がないのでどのルアーが効くのかさっぱりわからない。誰に聞けばいいのか?今更だがメンバーにに聞いたとこで今まで誰一人餌以外で釣ったことがないのだからどうしようもない。まずは、ガイドにオススメのルアーを聞くことにした。するとミノーを指差すのでこいつをまずはキャストする。
とにかく投げまくった。
トゥイッチやジャークを試すのだがいっこうにバイトが無いのだ。
そもそもこれだけマッディーな水質でこのルアーに気づくのかと。
何かが違うような気もするが、、、、、
とにかく頭の中は疑問符だらけ???
ルアーを変えたりアクションを変えたりと駆使するが今ひとつ突破口が見つからない。
困ったことに時折、ピラルクーの呼吸音が余計に焦らす。
そんな私にガイドが業を煮やしたのか餌で釣れと何やらバカデカイ発泡の浮きとフックを手渡してきた。ルアーマンとして若干抵抗はあったがこれも勉強かと思いながらやってみることにした。小魚の頭を餌にしてしばらく待つ。すると、思いのほか早々にウキが沈んだのだ。
え?餌はこんない簡単に釣れるのかと。ファーストフィッシュに驚きと動揺で困惑した。
初めて手にするピラルクーはまるで丸太を抱えてるようで、ずっしりと重く意外とおとなしい。
顔の色は今まで見たことない抹茶色というより鶯色に近く古代魚らしい顔つき、まんまるく愛らしい目といいもう、身震いするほど格好いいのだ。完璧である!
ターポンもかなり格好いい魚だがこいつも素敵なのだ。
ギターで例えるならレスポールもカッコイイがストラトも捨て難い。フェラーリも格好いいがランボルギーニも格好いいそんな感じなのだ。甲乙つけるのは全く意味のないことなのだ。
もちろん初めてみる魚に興奮はしたのだが、何かが違う。込み上げてくる嬉しさはもちろんあるが何かが足りない。そう、本来のミッションはルアーで釣ることで、できればトップで釣り上げるとミッションを決めていたからだろう。
その後、餌だと面白いように釣れたのだが、やはりここはルアーマンの意地もあるので再びルアーをキャストすることにした。
 

しかし、餌のようにそう簡単には釣れてはくれない。
だが餌釣りの感覚がヒントとなったのかルアーアクションを変えることで、
すると偶然か?まぐれか?実力か?その後、待望のピラルクーをついにミノーでキャッチすることができた。その後、フッキング率も徐々に上がりだし、数匹キャッチしたところで余裕が出てきたのでいよいよトップで攻めることにした。
何よりもトップで釣ることがセッカンドミッションの一つにあったので是が非でも釣りたい。
Y氏の『ザラに出た!』あの一言でここまで来たのだから必ず釣ると自分に言い聞かせながらピラルクーの捕食のイメージをし続けた。
 
今までのトップの経験を駆使しするにはいいチャンスだし、しかもトップで釣れたら日本人初となるにちがいない
 
とにかくトップをキャストしているこのワクワク感がたまらなく心地いいのだ。

ところが、またもや偶然か?まぐれ?事故?そんなに多くの時間は必要としなかった。
突然、前ぶれもなくいきなり吸い込むデカイ捕食音がしたのだ。

 

 
学生の時、初めて聞いたマーシャル100Wの生音の迫力と同じ衝撃が走った。全身に電気が走り身震いしたあの同じ衝撃が。


なんとイメージした通りに口を使ったのだ。実は初バイトは惜しくもルアーは外れたがこれで確信と自信に変わった。その後、パターンを掴んでからは面白いようにバイトが続き、ノイジー、ダーターでキャッチすることができたのだ。時にはフロッグにも出たがバレた。

今度は少し余裕が出来たのでガイドの少年に8mmビデオで撮影してもらうことにした。なんせ、撮影が初めてなのか手ぶれがひどくて上手く撮影できなかったのだがなんとかテープに収めることができた。もしかすると当時ならピラルクーのトップのバイトシーンは世界初?
で、その映像がこれ。

 
何と終わってみれば2日半で全て合わせると20本近く釣り上げ、おまけにオカッパリでピラルクーを釣ることができ。
これはもう大満足である。
 

 
とにかく、初ピラルクーは大満足の結果となり、あのジンマシンも今では懐かしい思い出となった。
 
さて、他のメンバーは流石に海外の釣り経験が豊富な人たちだけに釣りまくってました。
 
フライ組の3名もあのピラルクーをフライで見事に釣り上げる事ができ、EIZO大先生にいたっては日本人初のフライでのキャッチとなり、相原大先輩はメンバーの中では一番大きいサイズをリリースされてました。
 
最後にメシアナ島のピラルクーはサイズもお手ごろなのもあってか思いの他良く釣れたのと、
ジャンプも圧巻で雷魚に似た吸い込む捕食音と跳躍が何とも魅力的だ。何はともあれあの古代魚をトップで釣るということが何とも幻想的だし、絵図らも申し分ないし。
とにかくトップ好きにはたまらない要素がふんだんなピラルクー。是非、トップ好きなルアーマンには挑んでいただきたいと思う。

このでのメシアナ島での2日半と短いピラルクー釣りもあっという間に終わり。あのセスナで一旦ベレンへ戻り、次なる目的地バルセロスへ一行は向かったのでした。
(そういえばメシアナ島行きのセスナから取材か何かよくわからいがブラジルのネルソン、、、さんがいつの間にか同行してました。失礼ながらブラジルでは有名な方とは知らず、当時まだ日本で無名だったデコントのルアーをいただきました。オブリガード!)