3rd Stage
ブラジル(バルセロス)ピーコックバス編

すでに日本を出発して何日目かなんて考えることすらでき無い。いや、考えても今日が9月の何日かなんて全く興味が無かったのが正解かもしれない。
とにかく頭は釣りのことだけを考えてればいいので日々のしょうもないことから解放され脳ミソは溶け続けるのがわかる。
今回のミッションのターポン、ピラルクー、おまけにスヌークもキャッチできた高揚感と安堵感とが心中で交差する中、次なるターゲットはグランデピーコックバス。
 
ブラジルではトゥクナレ、ベネズエラではパポーンと呼ばれ近年では知名度もかなり上がってきたのでご存知の方も多いのでは。
今ではフロリダにも生息しているらしくハワイの湖でも友達は釣ってた。
とにかくトップでの反応は素晴らしいド迫力を見せてくれる。
たとえるならマイケルシェンカーの” CRY FOR THE NATION ”のイントロの爆撃音並みの迫力といえばとわかりやすいか。
家でこのイントロを大音量で聞くと間違いなく北朝鮮がミサイルを打ち込んできたとご近所さんは勘違いするに違いない。
ジャークしたスウィッシャーにド派手な水しぶきを上げて出た瞬間、背筋がピーンと伸びるは、その瞬発力とトルクフルな引きが想像以上に面白いのだ。
とにかくたまらない。ラージマウスバスをこよなく愛するアングラーがこれを味わうともう抜け出せない。
病み付き間違いなし、また必ずアマゾンに足を運んでしまうくらい面白い。ま、そのうちの一人が私なのだが!(笑)ちなみに東京の友人は結婚するまでの10年間毎年通ってました。
私はこれまでにベネズエラのオリノコ川水系1回、ブラジルのアマゾン河はこれで3回目なのでそれに比べれば軽傷な方だ。(2002年現在)

 

 
さて、我々はメシアナ島からベレンへ一旦戻り次はアマゾン河の入り口の都市マナウスへ向かう、そこからチャーターセスナでバルセロスへ飛び立つ。セスナ上空から見る毛細血管のような川は何度見ても興奮する。この心の高鳴りは何とも言えない。
この、風景を見たくて生きてるようにすら思える。
これだけはもう表現のしようがないくらい素晴らしい。生きてて良かったただそれだけ。

 

マナウスから1時間程でバルセロスに到着し、ジャングルの中にあるバルセロスの空港は無人で近くの町並みもこじんまりとしていた。
なんだか日本のローカルな駅を思わせるほど周りは静寂で人けを感じることはなかったが船着場に近づくにつれ騒がしくなってきたので少し安心した。

ここはマナウスみたい大きな港らしきが場所はなく、単なる船着場だった。空港から川までは徒歩圏内、そこにマザーボートを待機させてある。
 
通常はマナウスから出発するのだが時間短縮のためにこのプランを組んだらしい。マナウスからバルセロスまでマザーボートで向かうとなるとそれなりの日数がかかるので効率的だ。
今ではこのパターンがお決まりだが当時はマザーボートも今ほど普及していなかった。
 

そして、これからジャングルフィッシングのお世話になるカシキアリー号のオーナーミゲール氏と2年ぶりに再会した。
ミゲール氏はフィッシングガイドというよりジャングルのガイドが詳しく性格も品行でとても穏やかな方なので今回もお願いした。
途中、原住民に薬を配ったりとどこの村に行っても歓迎されるほどいろんな方々と親交があるのでほんと頼りになるガイドだ。
これからの7日間は上流を目指して釣り上がる予定だ。

 

チャーターマザーボートの一般的な解説をするとマザーボートに16FTのアルミボート(ジョンタイプ)を数艇搭載してあるので各々で釣りをすることとなる。二段ベットにシャワー完備。食事も全て専属のコックが用意をしてくれる。アルミボートにはスタッフの1名が搭乗すのでエレキの代わりにパドリングしながら気持ち良く釣りをさせてくれるのだ。なぜかあちらではガイド役のスタッフをパイロットと呼んでいた。
1日のスケジュールはモーニグを食べてまずは午前の釣り。

 

 
昼は一旦マザーボートに戻りランチ終えてそしてまた暗くなるまで釣り、そして船上でディナー。夜間は寝ている間に移動し良いエリアまで走ってくれる。
そこでまた、新たなポイントに入り良いエリアに入ればしばらくはそこで釣りをすることとなるが釣果が悪ければランチ中でもマザーボートを走らせ移動する。

面白いのはいつの間にか知らない村人がアルミボートに乗ってきてはガイドをしてくれている。この配慮はミゲール氏によるものなのか、またジャングルルールなのかは定かではないが助かる。
ネグロ川も広いのでエリアの村民にいいポイントは聞いた方早いに決まっているわけで、何故なら村人はほぼ漁師なのだから。生きるために魚を取っているのだから漁師というよりなんだろう?自給自足のための漁といえばわかりやすいのか。とにかく、とても素晴らしいルールなのだ。
あと、意外と知られていないのはアマゾン川にも遊漁権(ライセンス)が必要だという事。
 
案の定、時期的にまだ満水なネグロ川はそう簡単には釣らしてくれません。
 
飽きない程度にバイトはあるもののなかなか思い通りにはいかない。
 
途中、あまりの水位の高さに釣果も悪いので地図を眺めながら作戦会議を開き丸一日かけて一気に上流へと移動することになった。
 
つまり、丸1日釣りができないのでビールを呑んだりハンモックで本を読んだりと各々で楽しむ。
 
もちろん釣りができ無いジレンマはあるがこのジャングルの風景を眺めてみたり、鳥獣の声に耳を傾けるこのひと時がとても贅沢に感じる。
 
 
日々の都会の喧騒から離れ頭を空っぽにできる。
やがて、無気力になり、帰国してからは楽しいアマゾンのことがしばらく頭から離れなくなる。いわゆる誰もがかかるこれがアマゾン病だ。
 
さてさて、丸一日かけて大きく移動したのだが減水時に見れれるようなホワイトサンドが露出するはずはなく、若干、下がったように感じたがこれ以上気にしないことにした。更にアラカ川を上ったところで水位が変わるとは思えないのでもうあとは運とセンスにまかせる。
 
例え水位が高くてもいいポイントを見つければサイズはともかくかなりいい思いを味わうことができたのも村人ガイドのおかげだった。トゥクナレの数を釣るならミノーに限る。
しかし、釣り人というのは贅沢な生き物で数の次は誰しもサイズを求めるという人種なのである。サイズを求めるならマグナムサイズのミノーの反応は素晴らしくそして、あのビッグスウィッシャーは一発大物に効く。

さて、釣果のほうは水位が高くてもいいポイントに入ればそれなりに反応もあったので、とにかくポイント選びが最大テーマだった。
水位の割にはそこそこ楽しめたというのが正直な感想である。良く勘違いされるのだがアマゾンに来ればどこでもなんでも釣れると思われているがそんなに甘くは無いと思ったほうがいい。はじめは私も安易に考えていたけど。
残念ながら今回のミッションだったグランデピーコックをキャッチすることはできなかったがそんなことよりここで釣りができる贅沢な時間とこれに携わる人たちに感謝である。
ただ、ただであるが、たとえ釣れなくてもこの空間で釣りをしていることの素晴らしさ。五感に伝わるすべてのものがきっとあなたをエモーションに変えてくれるはずである。
そして、あなたの釣り人生がきっと変わるはずである。是非、バスマンなら体感していただきたい。
そんなこんなでまた、きてやると己に誓ったのでした。
 
さて、楽しいジャングルフィッシングを終え。今度は帰りのバルセロスの空港でまたまた珍事件が起こった。
8日間のジャングルフィッシングを終えバルセロスの空港でチャーター機のセスナを待っていたのだが待てど暮らせど一向にセスナが迎えに来ないのだ。この冒頭にも書いたがジャングルの中にある無人の空港なので何の情報も無いのだ。出発の掲示板があるわけでもなくただ、待合の椅子に座りボーッと空を眺めるメンバー。何時間待っただろうか?朝から待っていたのでとっくに昼を過ぎていたように思う。こちらの時間、間違いなのか、果たして途中墜落したのか色々妄想する我々。
時折、セスナが飛んでくるたびに確認するが全く関係のない別便なのでついに、業を煮やしたY氏が、唯一の連絡手段の公衆電話を航空会社にかけた。すると、電話対応の答えが『明日だと思った』と想定外の返事が返ってきた。これにはメンバーも『さすがブラジル人』と呆れ顔だった。そんなわけで明日までジャングルの空港で待てるはずはなく、何とか本日中に迎えに来るよう交渉をしてくれた。そこからまた、数時間待つことになるのだが今度は迎えに来たセスナを見てメンバー全員が首をかしげた。その理由とは行きのセスナよりあきらかに小さいのだ。どう見ても我々全員と荷物が載るような大きさではない。そうか、もう一機が時間差で飛んでくるのかと思いきやパイロットいわくこの一機だと言う。

 

 
 
さすがブラジル人である。もうこれは明らかに全員が乗ることは不可能なのでもう一機よこすよう交渉したが乗れると言い張るのでパイロットの無謀な指示に従い客用シートを前方にスライドさせられ、狭くなった座席に正座し、次はロッドケースを肩にかつがされ身動きでき無いほどギュウギュウ詰めさせられたのだ。これで全員何とかマナウスに帰れそうだが既に時刻は夕方、もはやチャーター機の意味はなかったのである。ま、これも旅の思い出とやり過ごすしかなかったのであった。